賠償責任保険の鑑定方法

 民法709条には「故意または過失に因りて他人の権利を侵害したる者はこれに因りて生じたる損害を賠償する責に任ず」とあります。簡単にいえば自分の責任で他の人に損害をあたえた者はその人に損害を弁償しなくてはならないということ。その要件としては故意(わざとやること)または過失(まちがえてやってしまったこと)があるということです。
 自動車で人をはねてしまったり、他の車や住宅にぶつけてしまった場合などの事故は自動車を運転するすべての人に起こりえることです。それを防ぐには厳重に注意して運転するほかありませんが、非常に困難です。しかもいくら注意しても事故は起こりえるでしょう。また、マンション等では築年が20年ともなると、給配水管が劣化し、そこが破損して水漏れ事故がおこる場合が数多くあります。その場合、マンションの上階からもれた水は階下に多くの被害をもたらすことがあります。それを防ぐには定期的に給排水管の交換工事をし、常に給排水管がこわれないようにする以外ありませんが、現実として非常に困難です。このように日常生活においてはいくら気をつけていても事件の加害者になってしまうリスクが少なからず存在します。このような事件・事故に対応するのが賠償責任保険で、加害者のための保険なのです。
 この賠償保険は多くの種類があり、また、自分の知らないところで賠償保険が入っている場合も多いので、もし事故を起こしてしまったら、確認するべきでしょう。「保険にはいってない。」と思っても、車検のきれていない自動車には自賠責保険がついていますし(但し、人身事故のみ保険適用)、傷害保険にはいっていれば種類によっては個人賠償責任保険(自動車事故は対象外)がついてる場合があります。
 ここでは賠償責任保険特有の注意点をのべます。
賠償責任保険の種類
 賠償責任保険の種類は多く、身近な例では自動車保険の対人・対物保険、自賠責保険も賠償責任保険の一つです。また、個人賠償責任保険は長期ものの保険(積立ファミリー交通傷害保険)に特約としてついている場合が多くあります。他に借家人賠償責任保険、店舗賠償責任保険、製造物責任保険、環境汚染賠償責任保険、行政書士賠償責任保険、社会保険労務士賠償責任保険、最近では会社役員賠償責任保険やIT事業者向けに新型企業賠償責任保険などが発売されました。今後もあたらしいニーズにあわせた賠償責任保険が発売されてゆくことでしょう。
賠償保険の鑑定(査定)方法
 賠償責任保険の査定方法は基本的に「損害保険鑑定法」と同じです。ただし、賠償保険は火災保険のように物にかけられた保険ではないので、「保険価額」という概念がありません。支払い保険金については損害額から免責金額を控除した金額となります。臨時費用保険金などの費用保険金はつきません。
 損害額の査定は損害の生じたものの現物が必要となりますので(なければ写真)できるかぎり保存しておきます。また、いくらで購入したか、いつごろ購入したか、どこで購入したかリストにしておくと良いでしょう。そのリストをもとに損害額が算出されます。
原因はなにか?
 保険事故はすべてにおいて原因の特定が必要ですが、この賠償責任保険はとくに原因の特定が重要になります。火災保険では放火かどうか断定できない不審火など、火災がおきたという事実だけで、保険金支払いの原因となりえますが、賠償責任保険ではそうはいきません。なぜなら、原因が特定できなければ加害者と被害者を特定できないため示談ができないからです。示談ができなければいつまでたっても事件が解決しないというわけです。
 なお、原因は被害者が立証しなければなりません。逆にいえば、相手が原因の立証ができなければ弁償しなくてもよいということです。注意すべきは、自動車事故についてはその立証責任は逆に加害者とされています(過失がないことが立証できなければ責任を免れることはないということです)。これは交通事故の被害者をすこしでも救済しようという考えのあらわれでしょう。ちなみに、原因の調査が必要ならば、被害者がその調査費用を負担しなければなりません。そして、それは保険金支払いの対象とはなりません。賠償責任保険は加害者のための保険だからです。
保険にはいっているからといって、、、
 ビルの管理会社などに言われて「保険に入っているから安心して」ということで原因が明確ではないまま事実上無関係の入居者が加害者にされている事件がいくつかありました。その加害者とされた住人はその事件で長くもめるよりも管理会社のいうとおり事件を早くおわらせてしまいたい一心で示談書に印鑑をついてしまったらしいです。しかし、このようなことは絶対にやめましょう。あとになって被害者から予想もつかない請求がくる(被害者の一つが店舗であったため莫大な休業損害を請求された)など、問題になったことがあるからです。一度責任を認めてしまうと、それを修正するのは簡単ではありません。
加害者になってしまったとき気をつけること
 交通事故を例にとりますと、事故直後すぐに被害者に、「一筆書いてくれ」と言われ、被害者が要求するすべての金品を賠償する旨の書面を要求されることもありますが、これは後々もめるもとになるのでやめたほうがよいでしょう。いくら要求してくるかわかりませんし、その要求が本当に妥当なのかどうかはその時点ではわからないからです。特に注意しなければならないのは代車(レンタカーなど本当に必要かどうか、必要がなければ保険金は支払われない)、慰謝料(物体だけの損害には基本的に慰謝料みとめられない)、内払金や一時金(一方的に責任を認めてしまったととられかねない)です。もし、要求されても、その場では「私ではわからないから、保険会社に聞いてみます。」と回答をさけましょう。そのように回答を保留しておき、専門家の指示をあおぐべきです。

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