「あっせん」は具体的にどういうモノだろう?と思われるかたもいらっしゃるかと思いますが、ネットとかでもそうですが、その情報の少なさにこまったことと思われます。原因は「非公開」だからでしょう。しかし、それでは今後、どんな対策、準備をしていいのやら、想像もつかないのではこの制度を充分に利用することはできないと思います。そこで当事務所が経験した範囲内であっせんとはこういうものだ、という説明をします。
あっせんのながれは概ね次のようになります。これは私が所属する茨城県の場合ですが、他県も概ねこのようなものと考えていいと思います。しかし、期間については労働紛争が年々増加している、と報じられていますので多少長くなるかもしれません。
@あっせん申請書を都道府県の労働局に提出
「あっせん通知書」は最寄の労働基準監督署にあります。また、インターネットをご利用のかたは各都道府県労働局などでダウンロードしてもよいでしょう。提出先は各都道府県労働局で、郵送してもかまいません。
A1ヶ月程で「あっせん開始通知書」が申請者に送達と、同時に被あっせん者(相手方)に送達される。
1ヶ月程してから「あっせん開始通知書」という書面が送られてきます。それには事件番号とあっせん委員の氏名が書かれており、今後はこの事件番号で処理されることになります。
Bさらに1・2週間くらいであっせんの日取りなどが通知される。
この段階で、相手があっせんに応じない場合は打ち切りとなる。打ち切りになれば、最終的に決着をつけるならば裁判しかないことになります。ただし、打ち切られたからといって、申請者が諦める必要はありません。相手も相手なりの言い分があるようで、どんなバカみたいな言い分でも自分にとっては正論なのです。それが最後までとおるかは別で、気がついたら「こんな結果になるなら、最初からこうしておけばよかった。」と思い知らされることになるでしょう。
C事業所管轄の労働基準監督署に集合、話し合いが行われる。
原則、会社所在地の労働基準監督署で話し合いが行われることとなります。ということで、ここにも裁判よりもメリットがあると感じられます。なぜなら、裁判であれば県庁所在地の地方裁判所に出向かなければならない場合があり、時間的、経済的負担が増えるからです。ただし、おそらくは裁判のように双方が合意した場合、例えばあっせん申請者管轄の労働基準監督署で、ということも可能であると思われます。
裁判もあっせんも紛争処理制度ではありますが、「あっせん」は話し合いの場です。そして、あっせんは「裁判類似行為」と表現されることもありますが、裁判とはまるでことなる制度と言っていいでしょう。それは次の特徴からも伺えます。私が思うに、裁判よりも、弱者である労働者側に配慮した制度と言ってもよいのではないのでしょうか。
@あっせんの相手方と顔を合わせるのは最初と最後だけ
場所は労働基準監督署の一室を使用して、あっせん委員(委員長含む)3人、当事者(代理人)双方がそこに集合し、あっせん委員長が
「ただいまより、茨城労働局事件番号○○番個別労働紛争解決促進法によるあっせんを開始します。申請者の主張は申請書のとおりですね?被申請者○○さんは何かありますか?」と言い、
それに対して、被申請者の主張をのべ、あっせんに入るのです。そのあと、委員長は
「それでは、申請者○○さんは一旦、別室へ、、、。」といわれ、各々、あっせん委員に対して主張を述べるのです。だから、あとは直接と相手と顔を合わせ、ののしりあう、ということはありません。
これが裁判だったらどうでしょう。しろうと同士、顔をあわせるために「そんなこと、いったおぼえはない。」「うそつくんじゃねえよ。」「名誉毀損だ。」「それは産業界が生み出した知恵だ(笑)。」などと、不毛なののしりあいがつづき、収拾がつかないことがあるのです。
A事実認定、証拠調べはしない
あっせんはその日のうちに決着がつくのが前提ですので、言った、言わないとかの事実認定や書類が真正なものかどうかの証拠調べは原則として、しません。しかし、証拠があれば相手の主張をそく、崩すことができる場合があるので、可能な限り、証拠はそろえておきましょう。なお、直接関係はありませんが、労働関係法令以外の違反の証拠もあれば大きな武器になる(重罪であればあるほど)ことは言うまでもありません。
B必ずしも法的根拠を要しない
例えば問題が配置転換の場合ですと、事業主には人事権があるので、法的に何に違反しているのかは非常に困難です。(判例からいえば、権利の濫用法理で処理されています。)「あいつ、生意気だから地方に飛ばしてやる。」では、卑怯なやりかたであることは誰の目にもあきらかでしょう。しかし、あっせんはこのような問題にも対応しているのです。この問題は今後、増えることが予想されるので、労働行政にこの問題を自覚させる意味でも積極的にあっせんを活用しましょう。
C原則としてその日のうちに結果が出る
解決した事件はあっせん委員の成果となるのでしょう。あっせん委員も解決に向けて努力してくれます。したがって、その日のうちに決着がつくことになります。(解決か打ち切りか)解決すれば、あっせん委員がその場で「合意文書」を作成し、合意に至ります。(代理人が出席した場合は後日、その文書2通が郵送され、その1通を本人が押印の上、郵送。あとの1通は本人の控えとなります。本当は代理人の押印だけでいいんですけど、、、。)
解決しない場合(打ち切り)は、裁判など他の紛争解決機関を教えてくれます。
D労働者があっせんの申請をしたことを理由として、事業主が不利益な取扱をすることは、法律で禁止
あっせんの申請をしたことを理由として、解雇など不利益な取扱をすることは法違反となります。もし、労働者のあっせん申請後、たいした理由もなく事業主が解雇をした場合は、あっせん申請自体が解雇権濫用の証拠になりえます。その場合には事業主が解雇の合理性を証明できないかぎり、きびしい判決がくだることになるでしょう。
Eその他、非公開、無料、委員には労働問題の専門家があたる、といったメリットもある
これらの特徴も裁判にはない大きなメリットです。裁判だと、傍聴席が裁判の待機室を兼ねていることがありますので、セクハラ問題等には抵抗があるでしょうし、また、費用面に関して、裁判所は国の機関であり、かつ裁判を受ける権利が憲法で保障されているにしては印紙代、切手代等(鑑定費用は最低でも50万円以上!!)の訴訟費用が高すぎる気がします。それを困っている原告に一旦、負担させるのはいかがなものかと思いますよね。
なお、裁判官の中には労働法規をしらないモノ(簡易裁判所の判事=カンパンに多い)もいるので、裁判は労働問題を解決する方法としてはいささか不安な感じがします。
社会保険労務士などの専門家に代理を依頼するメリット
このように、あっせんには裁判にはない多くのメリットがありますが、何度か述べたように、当事者が労働法規や判例などの知識の不足や誤解をしているばかりに話し合いにならない場合があります。また、証拠をそろえることが出来ないため、解決のできる可能性がなくなってしまい、泣き寝入りする場合があります。
それを防ぐにはまず、やはり「総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談」を利用し、法律的にはどうなっているのかなどの情報を仕入れ、今後の対応などの相談は社会保険労務士等の専門家を利用すればよいと思います。専門家に依頼すればそれなりの費用がかかります。しかし、なにも知らないまま、あるいはおっとり刀で、いきなり裁判など起こした場合、いったん戦いを挑んだからには勝つしかなく、負けたらそれこそ目もあてられないことになるでしょう。
ところで、やはりあっせんは戦いの場ではありません。あくまでも話し合いの場です。当事務所はそのことを強調するとともに、相手に対しても話し合いで解決を図るよう、「お願い」するという立場をとります。あくまでもソフトに。できうれば、労使双方のメリットになるような提案をしつつ、解決の手助けをしたいと思います。
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